天地覆載の碁に命ずる。─ 古事記と囲碁 ─

古事記の読み方

古事記には多くの神々が登場します。

ほとんどの方は古事記を表面的にしか読まないので、ご存じないと思いますが、神の名には全く別の意味が隠されています。

今回はその一例をご紹介しましょう。


古事記とは?


まず、古事記について簡単に説明します。古事記は、日本最古の歴史書であり、太安万侶により編纂され、712年に元明天皇に献上されました。神話や伝説、古代の歴史が記録されており、日本の起源や古代の出来事を知る上で重要な資料です。三巻から構成されており、上巻は天地初発から神々の物語、中巻と下巻は歴代天皇の系譜や事績が記されています。

天孫降臨とは?

今回紹介するのは、いわゆる「天孫降臨」の場面にある文章です。
天孫降臨は、天照大御神(あまてらすおおみかみ)の孫である邇邇藝命(ににぎのみこと)が、高天原(たかまがはら)から地上に降り立ち、国土を治めるという神話です。この出来事は、日本の神話体系において非常に重要な位置を占めており、天皇の祖先神話の一部としても知られています。

天孫のお供

原文は句読点のない白文です。

「爾天兒屋命布刀玉命天宇受賣命伊斯許理度賣命玉祖命幷五伴緖矣支加而天降也」

通常の表面的な読み方では、次のように読みます。

「そこで、天児屋命(あめのこやねのみこと)布刀玉命(ふとたまのみこと)天宇受売命(あめのうずめのみこと)伊斯許理度売命(いしこりどめのみこと)玉祖命(たまのおやのみこと)、合わせて五伴緖(いつとものお)を支えに加えて、天降り(あまくだり)させました。」

この五人の命は、邇邇藝(呉音:ニニゲ)の天降り(あまくだり)に随行することになった者達です。ちなみに、「命:みこと」も神ではありますが、厳密に言うと神ではなく「王」です。邇邇藝も命であり、その父、天忍穗耳も既に命です。そう言えば、須佐之男(呉音:スサノオ)も命ですね。

特別な読み方

古事記において、神や命の名前を読むときは、近くにある「指示」に従って読みます。
ここでは「幷五伴緖矣支加」が読み方の指示になります。

幷:(呉音:ヒョウ、漢音:ヘイ)あわせる、ならべる
矣:(呉音・漢音:イ)漢文の助字。句の最後につけて断定・推量・詠嘆などを表す。
  …である。…だなあ。…だろう。
支:(呉音・漢音:シ)ささえる、わかれる
加:(呉音:ケ、漢音:カ)くわえる、ふやす


「矣:イ」は、それらしく適当に置いてある文字です。偽装です。
この指示は「並べて、五伴緖を分けて加える」となります。

指示に従って読んでいきますが、まずは固有名詞部分を「呉音」で読みます。
古事記は必ず呉音で読みます。大事なので覚えておいてください。

天兒屋    (テンニオク
布刀玉    (フトウゴク
天宇受賣   (テンウズメ
伊斯許理度賣 (イシコリドメ
玉祖     (ゴクソ
五伴緖    (ゴバンジョ

これが「幷:ならべる」にした状態です。

次に五伴緖を分けます

ゴ、バ、ン、ジ、ヨ

分けた五伴緖を加えます

テンニオク  + ゴ
フトウゴク  + バ
テンウズメ  + ン
イシコリドメ + ジ
ゴクソ    + ヨ

テンニオクゴ、フトウゴクバ
テンウズメン、イシコリドメジ
ゴクソヨ

これでは語呂が悪いので、最後の「天降也:テンコウヤ」も付けます。

天に置く碁、ふと動く場
天埋めん、石凝り止めじ
玉そ世、天請うや

綺麗な詩だと思いませんか。素晴らしいですよね。
漫画「陰陽師」では、安倍晴明が
天地覆載の碁に命ずる。天にのぼりて鬼神悪霊の目を眩ませ。
と唱えて結界を張りましたが、
古事記では、天皇による国作りを「天から打つ囲碁」に例えているのです。

このように古事記には、特別な読み方が、現実として確かに存在するのです。

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